「仕事ができる人は、自分のところに仕事を溜めない」といわれます。
私はこの状態が、企業のキャッシュフローが良い状態と似ているように感じました。
企業は、売上や資産が多いだけでは安定しません。必要なときにお金が入り、必要な支払いができることも大切です。
仕事も同じではないでしょうか。
多くの仕事を抱えて忙しくしていても、完成、回答、依頼、判断などに変わらなければ、周囲の仕事は進みません。
この記事では「仕事のキャッシュフロー」という比喩を使い、自分のところで止まっている仕事を、次の状態へ動かす方法を考えます。
- 仕事を抱えることと、進めることの違いを説明できる
- 自分のところで止まっている仕事を見つけられる
- 完了、依頼、確認・相談、熟考、停止のどれへ動かすか判断できる
なお、この記事で使う「仕事のキャッシュフロー」は、仕事の流れを考えるための比喩です。財務上のキャッシュフローと同じ概念ではありません。
仕事を持っていることと、仕事を進めていることは違う
仕事ができるかどうかは、抱えている仕事の量ではなく、次の価値へ変えた量で考えます。
資料を途中まで作った。メールの返信を考えた。誰かに確認しようと思っている。
どれも必要な活動ですが、そこで止まっていれば、相手は次の作業へ進めません。本人は忙しくても、仕事全体では待ち時間が増えています。
これは、売上が計上されても、まだ代金を回収できていない状態に少し似ています。帳簿上の数字が動いていても、実際の支払いに使えるお金が入っているとは限りません。
仕事でも、活動量と流れた価値は分けて考える必要があります。
| 見るもの | 具体例 |
|---|---|
| 活動量 | 考えた時間、作りかけの資料、参加した会議 |
| 流れた価値 | 完了した仕事、返した回答、出した依頼、得られた判断 |
自分がどれだけ動いたかではなく、誰が次へ動けるようになったかを見る。これが、仕事の流れを良くする最初の視点です。
仕事の目的や期日を最初に整理する方法は、仕事ができる人とできない人の最大の違い「段取り」でも解説しています。
未処理の仕事は「仕掛かり中の在庫」に似ている
終わっていない仕事が増えるほど、時間だけでなく、記憶と注意力も拘束されます。
企業では、商品を仕入れてから代金を回収するまでに資金が必要です。中小企業基盤整備機構の解説でも、在庫の滞留期間が長くなるほど資金繰りは悪化するため、在庫と回転期間の把握が必要だとされています。
仕事も、途中の状態が増えるほど管理の負担が大きくなります。
久しぶりに資料を開き、「どこまで作ったのか」「次に何をするのか」を思い出す。古くなった前提を確認し直す。依頼を出していなかったことに期限直前で気づく。
未完了の仕事には、このような見えない維持費がかかります。
だからといって、一つの仕事を終えるまで、ほかの仕事に触れてはいけないわけではありません。大切なのは、仕掛かり中の仕事を必要以上に増やさないことです。
すぐに終わらないなら、次の行動と期限を決める。ほかの人の情報が必要なら、先に依頼を出す。これだけでも、理由の分からない滞留を減らせます。
手元から仕事をなくすだけでは「流した」ことにならない
仕事を流すとは、次の人が迷わず動ける状態で渡すことです。
仕事を抱えないようにしようとすると、何でも人へ渡せばよいように感じるかもしれません。
しかし、目的も期限も分からない依頼を投げれば、相手のところで仕事が止まります。質問が返ってきて、自分の手元にも戻ってきます。
これでは、自分の在庫を相手の在庫へ移しただけです。
- 目的:何のために必要なのか
- 依頼内容:何をしてほしいのか
- 期限:いつまでに必要なのか
- 完了状態:何がそろえば終わりなのか
- 判断点:相手に何を決めてほしいのか
仕事の流れには、速さだけでなく、受け取った人が進められる品質も必要です。
仕事を5つの行き先へ振り分ける
手元で止まっている仕事は、完了、依頼、確認・相談、熟考、停止のどれかへ動かします。
仕事を受け取ったら、すぐに終わるかどうかだけで判断しないようにします。
自分以外の人が必要か。自分に決める権限があるか。今考える価値があるか。そもそも続ける必要があるか。この順に見ていくと、次の行動を決めやすくなります。
| 今の状態 | 次の行動 | 完了の目印 |
|---|---|---|
| 自分だけで終えられる | 完了して返す | 相手が受け取れる状態になった |
| 他者の情報・作業が必要 | 早めに依頼する | 依頼先と期限が決まった |
| 自分では決められない | 判断材料を整理して確認・相談する | 誰が何を判断するか決まった |
| 深く考える価値がある | 考える時間と期限を確保する | 次に見直す日時が決まった |
| 目的に不要、または優先できない | 断る、やめる、期限を再調整する | 関係者と扱いを合意した |
ここでいう「停止」は、勝手に仕事を捨てることではありません。目的や優先順位を確認し、関係者と合意したうえで、やらない、または今はやらないと決めることです。
相談が必要だと分かっても、どのタイミングで声をかけるか迷う場合は、仕事を抱え込まず早めに相談する4つの基準を確認してください。
時間をかける仕事には、理由と期限を付ける
良い滞留と悪い滞留の違いは、止めている理由と次に動かす時点が決まっているかです。
すべての仕事をその場で処理する必要はありません。
調査、設計、重要な判断には、考える時間が必要です。急いで結論を出せば、手戻りが増えることもあります。
一方で、「もう少し考えよう」と机の上に置いただけでは、時間ができるとは限りません。新しい依頼に押され、期限直前まで放置されやすくなります。
考える仕事には、少なくとも次の二つを決めます。
- 考える時間:いつ取り組むかを予定へ入れる
- 次の判断日:いつまでに続行、相談、停止を決めるか
「未完了」ではなく「次に動かす日時が決まった保留」に変えることが大切です。
予定の余白は、仕事を止めないための運転資金になる
予定を埋め切らず、判断と突発対応に使える余力を残します。
予定を100%埋めると、急な依頼やトラブルが一つ入っただけで、その後の仕事まで遅れます。
反対に余白があれば、必要な返信や確認を先に済ませ、周囲の待ち時間を短くできます。空いている時間ではなく、仕事全体の流れを守るための余力です。
会社が支払いに備えて手元資金を確保するように、個人も想定外へ対応する時間を残しておく。この意味で、時間の余白は仕事における運転資金のようなものと考えられます。
ただし、最適な余白は仕事や職場によって異なります。この記事では、一律の時間や割合は決めません。
まずは一日の予定を見て、急な確認が一つ入っても崩れないかを確認してください。すでに埋まっている場合は、新しい仕事を引き受ける前に、期限や優先順位を相談します。
まとめ:仕事ができる人は、仕事の流れと余力を管理している
今日、自分のところで止まっている仕事を一つ選び、次の状態へ動かしましょう。
仕事ができる人とは、ただ処理が速い人ではありません。
仕事を必要な次の状態へ動かしながら、判断や想定外に対応できる余力を残せる人です。
- 仕掛かり中の仕事が必要以上に増えていない
- 次の人が動ける品質で仕事が渡っている
- 止まっている仕事に理由と期限がある
- 想定外へ対応できる余力が残っている
最初から、すべての仕事を整理する必要はありません。
まず一つだけ選びます。それを完了するのか、誰かへ依頼するのか、相談するのか、考える時間を取るのか、やめるのか。行き先を決めてください。
仕事を溜めないとは、何でも急いで終わらせることではありません。仕事が止まっている理由をなくし、次へ流し続けることです。


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