仕事をしていて、過去の実績と未来の目標については話すけれど、「今」の状況は十分に見えているのだろうか、と考えました。
過去の業務実績を集計し、それをもとに今後の計画を立てる。企画を考えるうえで必要な仕事です。ただ、その間にある「今、現場で何が起きているか」を、どこまで把握できているでしょうか。
「今、どこで問題が起きているのか」
「今、困っている人はどこにいるのか」
こうしたことがすぐにわかり、次の行動を判断できる。日々の仕事に必要な見える化は、そういうものではないかと思います。
今回は、車のダッシュボードを例に、この「今が見える」ということを考えてみます。Power BIなどで作った画面や、普段の進捗表を見直すときにも、使える観点です。
車の速度計や燃料計は、今どうするかを判断するためにある
今の状態が見えると、その場で必要な行動を判断できます。
車のダッシュボードにある速度計や燃料計を思い浮かべてみてください。
速度計は走行速度を、燃料計は燃料の残量を示しています。メーカーの取扱説明書でも、これらはメーターの表示として説明されています。(参考:トヨタ「計器類」)
ドライバーは速度を確認し、制限速度や周囲の状況に合わせて調整します。燃料が少なくなっていれば、ガソリンスタンドに立ち寄る必要があると判断できます。
表示された情報が、その後の行動につながっているわけです。
もちろん、過去にどれだけ走ったかという記録も、これから向かう目的地も役立ちます。そのうえで運転中には、「今、どのくらいの速度で走っているか」「今、燃料はどれくらい残っているか」を知る必要があります。
仕事の見える化にも、この視点を持ち込みたいと思います。
今、止まっている仕事と困っている人は見えるか
進行中の仕事を見るときは、どこで何が止まり、誰にどんな支援が必要かまで確かめます。
ある部署で、毎月の処理件数を集計しているとします。先月はどれだけ処理したか、前年と比べて増えたか。こうした情報から、業務量の変化を振り返れます。
では、その表を見て、今日どの仕事を手伝えばよいか判断できるでしょうか。
仮に、ある担当者の仕事が、他部署からの回答を待って止まっていたとします。その状態が見えれば、関係部署へ確認したり、回答までに進められる仕事を整理したりできます。
別の担当者に、締め切りが近い仕事が集中しているなら、分担や優先順位を相談する必要があるかもしれません。
「処理した件数」と一緒に「まだ進められていない仕事」が見えると、声をかける相手や確認する内容が具体的になります。
ただ、未処理の件数だけで、その人が困っているかどうかまで決めつけることはできません。同じ件数でも、仕事の難しさや締め切り、ほかに抱えている仕事は違います。
そこで、止まっている理由や、本人が助けてほしいことも共有できるようにします。「確認先がわからない」「判断してもらえれば進められる」といった一言があるだけでも、何を聞けばよいかがわかります。
困っている人を見つけたら、まず状況を聞く。見えるようになった情報を、具体的な支援へつなげたいところです。
Power BIでも、見る人が何を判断するかから考える
ダッシュボードに載せる情報は、それを見た人が何を判断するかから選びます。
Power BIなどで業務の状況を表示するときも、車の速度計や燃料計と同じように考えられます。
たとえば、チームのリーダーが、仕事の分担や関係部署への確認を判断する画面を作るとします。説明用の例ですが、次のように整理できます。
| 今、判断したいこと | そのために見たい情報 |
|---|---|
| どの仕事の状況を確認するか | 締め切りが近い未完了の仕事、止まっている工程 |
| 誰と分担を相談するか | 担当ごとの未完了の仕事、期限、本人からの支援依頼 |
| どこへ回答や判断を求めるか | 回答待ち・承認待ちの仕事、依頼先、待ち始めた時点 |
ここまで決めると、必要な項目を選びやすくなります。さらに、気になる表示から個別の仕事を確認し、担当者へ聞けるようにしておきます。
集計のグラフを見て「仕事がたまっている」とわかっても、それがどの仕事か探すところから始まるなら、支援までに手間がかかります。画面を開いてから、確認したい仕事へたどり着くまでの流れも、使う人の立場で確かめたいところです。
Microsoftのダッシュボード設計の公式ガイドも、利用する人や、その人が意思決定に必要とする情報を考えるよう案内しています。
作った画面を実際に見る人に、「この情報から、今どの仕事を確認しますか」と聞いてみる。答えが出なければ、表示する項目や、個別の仕事へのたどり着き方を見直す余地があります。
「いつの状況か」がわかってこそ、今の判断に使える
情報の時点を明らかにし、対応が間に合う頻度で更新・確認します。
ここで気をつけたいのが、画面に表示されている情報の新しさです。
今開いた画面でも、表示されているのは昨日の状況かもしれません。回答待ちと表示されている仕事が、すでに終わっている可能性もあります。
Power BIは、接続方法や更新の仕組みによって、表示へ変更が反映されるタイミングが異なります。たとえばインポートしたデータは、元のデータに変更があっても、その変更を取り込む更新が必要です。(参考:Microsoft「Power BIでのデータの更新」)
元の業務記録が更新されているか、その内容が画面まで届いているか。両方を確かめる必要があります。「いつ画面を開いたか」と「いつ時点の状況が載っているか」は、別の話です。
必要な更新頻度は、判断する仕事に合わせて考えます。朝に一日の分担を決めるなら、その判断に必要な時点の情報をそろえる。当日の途中で起きた問題に対応するなら、変化を途中でも知らせる方法を用意する、という具合です。
情報が古い、入力が抜けている、状況がまだ確認できていない。そんなときは、確認が必要な状態だとわかるようにし、担当者へ直接聞きます。
また、問題が表示されても、対応できる人が気づかなければ動けません。誰がいつ確認するかを決め、急ぎの困りごとは直接知らせる。画面と普段の連絡をつなげておくことも必要です。
手元の画面から、次の行動を一つ決めてみる
普段の画面を見て、今確認する仕事や、声をかける相手を一つ選んでみてください。
過去の実績を振り返ることも、未来の計画を立てることも、見える化の役割です。そこに、今の状況から動くための情報がそろっているかを加えて考えてみます。
まずは、手元のダッシュボードや進捗表を一つ開いて、次の点を確かめてみてください。
- 今、どこで問題が起き、どの仕事が止まっているか。
- 今、誰に状況を聞き、どんな支援を相談すればよいか。
- それは、いつ時点の情報か。
- 見た人が、次に取る行動を決められるか。
答えに迷う項目があれば、そこが見直しの出発点になります。足りない情報を一つ補い、実際に判断しやすくなったかを、使う人と確認してみるとよいと思います。
車の燃料計を見て、給油の必要性を判断する。仕事の状況を見て、止まっている仕事を確認し、困っている人に声をかける。
「今が見える」というのは、そうやって次の行動を選べることだと、私は考えています。


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